○潜入六日目○
「よっし、いくか!」
「うん!」
ぱしっと軽く手を打ち合わせると、蛮と銀次は校舎を見上げた。
二人が今いる場所は、この学校で特別棟と呼ばれている校舎の入り口だった。
特別棟とは、理科室や美術室、家庭室などの特別教室ばかりが入っている校舎で、普段自分達がお世話になっている三年の教室とは渡り廊下を挟んで向かい側にある。
今日は休日で授業もないので、特別棟の校舎はがらんとしていた。
遠くのグラウンドから運動部の練習する声が時折聞こえるだけで、校舎付近に生徒の姿はない。しかし、時折教師が通りかかるので安心はできない。さっきも銀次が風紀の教師に声をかけられたばかりだった。
「蛮ちゃん制服着てきて正解だったね」
「ああ。それよりさっさと移動しようぜ。ほかのセンコーが来ると面倒だ」
蛮は軽く辺りをうかがうと足音を殺して校舎の階段を駆け上がる。それに続いて銀次も。
目指すは、四階の科学室。
ドアの陰に身体を隠し、そっと窓から中の様子を伺う。
「誰もいなさそうだよ」
その銀次の言葉を合図に、二人は科学室のドアの隙間から身体を滑り込ませると教室の中へと進入した。
「教卓…はなさそうだな。準備室から探そうぜ」
「カギがかかってるよ、蛮ちゃん」
「ちょっとどけ」
先に準備室へのドアに手をかけていた銀次を横にどかせ、蛮がスネークバイトでカギを強引に引きちぎる。
「……蛮ちゃん。それはちょっとダメじゃない?」
「うっせー、ここで写真が見つかればあとのことは問題なしだ」
銀次がジト目で見つめてくるのをさらりと無視して、蛮は準備室へと足を踏み入れた。
…数十分経過。
「! あった!」
「どれだ!」
銀次がひらひらと掲げている写真をひったくるようにして取り、中身をすばやく確認する。
と、その時。
ガタンッ
「あれ? カギが……」
準備室の外から男の声がした。
「蛮ちゃん。先生が来た!」
「わかってる。問題の写真は奪還できたし撤退するぞ」
蛮が学ランの内ポケットに問題の写真をねじ込みつつ立ち上がる。そして二人が囁きを交わした次の瞬間。
カチャ
準備室のドアが開いた。
「うわっ! お前達こんなところで何をしている!」
教師の怒鳴り声を合図に蛮と銀次が同時に、入り口とは反対側の窓に向かって走り出した。
蛮がカギのかかった窓に飛びつき素早くカギを外すと、待ってましたとばかりに銀次が開いた窓の窓枠に足をかけた。
「先に行くね」
そういうと身体をひらりと窓の外へと躍らせた。
「おいここ四階だぞ!」
慌てる教師を尻目に、銀次の後を追って蛮も窓の外へと飛び出した。
「おい!!」
教師は驚き、急いで下に続く階段へと走り出した。
その足音を、窓の外の壁に磁石のように引っ付いた格好で銀次は聞いていた。その腕にはしっかりと蛮が抱きかかえられていた。
「よし奪還成功!」
「だね!」
→ It continues.