【銀次 編】
第三話 チーム結成編

 オレの名前は天野銀次。
 見てのとおりのネコ。
 オレは今、MAKUBEXたちに飼われて無限城ってトコに住んでるんだ。
 ここの生活にもだいぶんなれてきたし、友達もできたよ。
 友達っていうのは、カヅっちゃんと、十兵衛と、雨流の三匹。
 その日も、いつものようにみんなで集まってたんだ。

◆◆◆


「銀次さん、そろそろ新しいチーム名を決めませんか?」
 そんなことを言い出したのは真っ白な毛足の長いネコ、名前は風鳥院花月。
 元『風雅』のリーダーだ。
 なぜ『元』なのかといえば、花月は現在、銀次の部下になってしまっているからだ。
 べつに銀次がどうこうした訳ではなく、花月たちの意志でなんとなく今の状態に落ち着いてしまった、というのが本当のところだが。
「チーム名?」
 銀次が明るい色の茶トラのしっぽをふりふり、小首をかしげる。
「そうだな、いつまでも『元・風雅』では、他の部下に対して示しがつかんしんな」
 そういって花月の意見に同意を示したのは雨流俊樹。
 元『風雅』のメンバーで神経質そうなグレーのネコだ。
 その雨流の言葉を横で聞いていて、黙って頷いているのが、同じく元『風雅』のメンバー、筧十兵衛。
 あいかわらず寡黙な薄茶色のネコである。
 その四匹でいつものごとく集まって、他愛のないことをしゃべっているうちになんとなく『新しいチームの名前』という話になったのだ。
「銀次さんはどんな名前がいいですか?」
「えー? う〜ん、と……」
 短い手(前足?)を必死に組もうともがきつつ、銀次が考え込む。
(名前…なまえ……う〜ん…)
 迷うようにしっぽを左右に振りながら、それっきり黙りこんでしまった銀次に助け舟を出したのは、十兵衛。
「そう悩むことはない。雷帝の好きな名でいいぞ」
 余談だが『雷帝』というのは最近ついた銀次の二つ名だ。
 主に十兵衛や雨流は銀次のことをこう呼ぶ。
 以前、銀次が「どうして?」と聞いたところ。二匹の答えいわく「なんとなく」だそうだ。特に意味はないらしい。
 さて話を戻すが、そうやって悩みぬいた末、銀次が思いついた新チームの名前は、
「MAKUBEXとおんなじのがいい!」
「MAKUBEXと同じ…ですか?」
 いまいちよくわからなかったらしい花月が小首をかしげる。
 だが雨流はピンときたらしく、
「ああ、無限城の……たしかチーム名は『VOLTS』だったか」
「ボルツ…ですか?」
「うんそう、それそれ!」
 雨流の言葉に銀次は嬉しそうに頷く。
「その『ぼるちゅ』!」
「雷帝……『ボルツ』だ」
 十兵衛が控えめに銀次の間違いを正す。
「うん、だから『ぼるちゅ』でしょ?」
「いや、だから…」
 その銀次と十兵衛のやり取りを横で聞いた雨流のこめかみに、青筋が…
「えっと…俊樹?」
 いち早く雨流の異変に気がついたらしい花月がそっと声をかける。その間も銀次と十兵衛のやり取りは続いていた。
「えーっ? あってるじゃん」
「いや、そのな…」
 ぷちっ!
 血管が切れる音を花月は聞いた気がした。
「いいか雷帝、よく聞け『VOLTS』だ! 『ボルツ』!!」
 突然の雨流の怒声に、その場にいた全員がいっせいに雨流を見る。
「あ、え、えっと…」
 思わずうろたえる銀次。
「言ってみろ『ボ』!」
「え、その……ぼ?」
 訳もわからず銀次は雨流の言葉を復唱する。
「そうだ。その次は『ル』」
「る?」
「最後が『ツ』だ!」
「つ?」
「そうだ。最初から続けて言ってみろ」
「ぼるちゅ?」
「だから、何でそうなる!!」
 もはや完全に怒り出した雨流を止めることは難しい。
 花月は、ふたりの間でおろおろしている十兵衛をちょいちょいと手招きで呼び寄せると、雨流の怒りが収まるまで隅のほうに座り、傍観を決め込んだ。
「なぜ言えんのだ!!」
「えーん。今日の雨流、こわい〜」
 すでに見慣れたいつもの光景だが、今日の嵐はなかなか激しそうだった。


end