イタズラを仕掛けよう
〜解決編〜

 片腕に子供の姿をした蛮を抱きかかえながら、銀次は街中を全力疾走していた。
 さっきの騒ぎで赤屍が誤魔化されてくれればいいが……
 後から追いかけてきていないかどうか背後を確認しようと振り返った瞬間、路地から出てきた人物と正面衝突してしまった。
「きゃっ!」
「うわっ!?」
 ぶつかった衝撃で派手に尻餅をついてしまう。それでも腕の中に抱きかかえていた蛮を離さなかったのはさすがといえよう。
 とりあえず相手に謝ろうと銀次が顔を上げて喋るより早く、
「いたたっ……あら銀ちゃんじゃない。そんなに慌ててどうしたの?」
 同じく尻餅をついて倒れている相手――マリーアがのんびりとたずねてきた。
「あ、マリーアさん」
「マリーアだと!?」
 その言葉に、銀次の腕の中で衝撃に目を回していた蛮ががばっと後ろを振り返った。
「……っ!」
 マリーアの姿を確認した途端、止める間もなく銀次の腕から無理やり抜け出すと、蛮は座り込んだままのマリーアの胸倉をぐい、と掴み上げる。(子供化しているのでいまいち迫力に欠けるが……)
「おいマリーア。犯人はテメーだろう! 人の身体で遊んでんじゃねーよ!」
「あら。いやだわ蛮。おちゃめなイタズラってやつじゃないの。そんなに怒んなくてもいいじゃない?」
 マリーアは小さな蛮に胸倉を掴まれたまま、いけしゃあしゃあと言い返す。
「そんなこと言って、蛮だって結構楽しんだんでしょ?」
「なんだと〜!」
「だってすぐにウチに来るかと思ってたけど、全然来ないんだもの」
「色々あったんだよ!!」
 そんな二人のやり取りを、銀次はおろおろと見守るしかなかった。親子ゲンカにも似たそれに口を挟むことができなかったのだ。
「とりあえずこの身体をもとに戻せ」
「はいはい。あーあ、もったいないわぁ、せっかく可愛いのに。ねぇ銀ちゃんもそう思うでしょ?」
 突然マリーアに話をふられ、銀次は思わず即答した。
「もちろん! 蛮ちゃんはすっごい可愛いです!!」
「やかましいわ!」
 力いっぱいまじめに答える銀次の後頭部に蛮のとび膝蹴りが炸裂する。
「あらあら、かわいそう。ほんとのコトなのにねー」
「うるせー」
 とりあえず銀次を黙らせてから、今度はマリーアをギッと睨み付けた。
「いいから元に戻せっての!」
「しょうがないわね、ついてらっしゃい」
 立ち上がり、スカートの埃を払うとマリーアは銀次とチビ蛮をつれて自分の店へと向かって歩き出した。


 ――その後、
 銀次と夏実が口々に『せっかく、すごく可愛かったのにもったいない』と元の姿に戻った蛮を見てはそう零し、そして、思いっきり不機嫌な顔をした蛮に睨まれる――という光景が、その後しばらく続いたという。


end