「はぁ? 三つ編みがしたい? なにいってんだよ唐突に」
「別にいいじゃないか。減るものでもなし…」
突然のロイのセリフに、エドワードはきょとんとしてその顔を見上げた。
街で事件に巻き込まれ、ドロドロに汚れてしまったエドワードにホークアイはシャワーを浴びてくるようすすめた。
シャワーをすませ、執務室のソファを占領しつつエドワードが首にかけたタオルで自分の頭をガシガシ拭いていると、さっきまで大人しく仕事をしていたはずのロイが唐突にそんなことを言い出したのだ。
「大佐がオレの髪、三つ編みにしたってしょうがないと思うけど…」
ソファに座り、ホークアイが入れてくれたお茶をすすりながらエドワード。
「………」
しかしロイはあきらめきれないのか、椅子から腰を上げるとエドワードの傍までやってきて、濡れているエドワードの長い蜂蜜色の髪を上からじーっと見下ろしている。
「………」
「………あのな…いーかげんにしろって」
そのロイの視線に耐えられなくなったのか、エドワードはタオルで拭いただけのまだ湿った髪をうるさそうにかき上げながら小首をかしげた。
「なんで急にそんなこと言い出したんだ?」
「…別に深い理由があるわけじゃないんだが、ただ鋼のを見ていたら、こう…なんとなく…」
……本当にただの思いつきらしい。
エドワードはしばらく呆れたようにロイの顔を見ていたが、仕方がないな…と言うふうにしぶしぶ首を縦に振った。
「しょうがねーなー。ちゃんと丁寧にしてくれよ、大佐」
「ああ、もちろんだともv」
エドワードの許可が下りた途端、どこから取り出したのか、ブラシを片手にロイは嬉々としてエドワードの蜂蜜色の長い髪に手を伸ばした。
「できたよv」
「……おい」
ロイから手渡された手鏡を覗き込んだ瞬間エドワードは思いっきり突っ込んだ。その鏡の中には、高くポニーテールに結い上げられた蜂蜜色の髪が揺れている。
「ちゃんとしろっていっただろーが!」
「かわいいよ鋼のv」
「俺の話聞いてんのか!?」
怒ったエドワードは、ソファに座ったままの体勢で身体をねじり、振り向きざまにロイに向かって左腕を振り上げた。しかし、その一撃はあっさりとかわされてしまう。おまけにその振り上げた左腕を逆につかまれてしまい、それ以上殴りかかることができなくなってしまった。
「ちゃんとやり直せよな大佐!」
腕をつかまれたままの姿勢でエドワードがロイをにらみつけると、ロイはさも残念そうに、
「せっかくかわいいのに……」
「ちゃんと三つ編みにしろ!!」
じろり、とエドワードがにらむとロイはしぶしぶエドワードの左腕を放して、ポニーテールにした髪をほどきにかかった。
「はい、できあがり」
「今度こそちゃんとしただろうな!?」
ふたたび手鏡で出来栄えをチェックする。今度はちゃんと後ろで一本の三つ編みになっているのを確認してから手鏡をテーブルの上に戻した。
「さっきのポニーテールもかわいかったがやっぱり鋼のは三つ編み、かな」
出来上がったエドワードの三つ編みを手にとっていじりながら上機嫌で言うロイ。
「そんなこと言うんなら、最初っからちゃんとしろっての…」
むくれるエドワード。ロイは笑いながらその蜂蜜色の頭を優しく撫でると、そっと髪に口付けた。
end