闇の奥に潜む恐怖
-2-

 翌朝。
 宿屋の主人の報告を聞いてエドワードたちが町外れに向かうと、そこにはすでに何人もの人だかりができていた。

 町外れから少し森の中に入り込んだ場所で『それ』は発見された。
 一見すると大きな狼の死体のようだった。だが、よく見るとそれはあきらかに自然界に存在するものではなかった。
 その狼の腰の辺りには――人間の子供のモノと思われる足が一本、生えていたのだ。
「何だこれ……キモチ悪りぃな〜」
 ロイに命じられて付近の人払いをしてきたブレダが、心底イヤそうに顔をしかめて、遠巻きに死体を見ている。
「ふむ」
「これって……」
「やっぱり…………」
 狼の死体を検分していた三人の錬金術師――ロイ、エドワード、アルフォンスはその異常な姿の死体を目にして、すぐにひとつの可能性に思い当たった。
「狼の変種……で片付けるにはあまりにも異常だな」
「やっぱり大佐もそう思うよな。これって錬金術かな?」
「不完全な……合成獣練成か?」
「うん、そんな感じ……」
 二人の会話を黙って聞いていたアルフォンスの脳裏にふと、嫌な想像が浮かんだ。思わずぶるりと身体が震える。
「ね、ねえ。ひょ、ひょっとして……その死体に生えてる人間の足っぽいものって……いなくなった子供の……とか言わないよね?」
 頼むから否定してくれ! というアルフォンスの願いも虚しく――
「……………………」
「……………………」
 アルフォンスの言葉に、二人は思わず沈黙した。辺りに漂う空気が重苦しい
「…………マジっすか?」
「嘘でしょ?」
「………………」
 近くで、死体のほかに手掛かりがないかを調査していたハボック、ブレダ、ホークアイの三人が、聞くとはなしにアルフォンスの話を聞いてしまい、心底イヤそうな顔をした。
「この死体の正体がなんであれ、この山の中に危険な『何か』がいることは確かだ」
 死体の側から立ち上がったロイが、全員の顔を見回して、
「全員、今すぐ準備を整えろ! 山狩りだ!」
 その上司の決定に、部下達は重い足取りで準備に取り掛かった。


→ It continues.