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(もう一週間近くもエドに会えていないな……)
その日。軍の仕事が休みだったロイは、ぼんやりとそんな事を思いながら、街を歩いていた。
先週、エドワードに告白してから一週間近く経つが、いまだにその時の返事はもらえていない――どころか、街中で彼の姿を見ることすらなくなった。
仕事で街に出るときには必ず、エドワードがよく来ていた場所へ足を運んでみたりしているのだが、まったくあの少年に会えないのだ。
(ひょっとして……私は避けられているのか?)
そんな事を考えながら、ぼんやりと人の流れにそって大通りを歩いていると、どこからか、聞き覚えのある怒鳴り声がロイの耳に飛び込んできた。
「おい、待てよ!!」
慌てて声の主を探せば――前方の人ごみの中に蜂蜜色の小さな頭が見えた。それとキッと睨みつけるようにして、自分の方を見ている金色の瞳が。
「っ!」
少年の存在に気がついたロイが声をかけるより早く、エドワードはあごをしゃくって無言で「ついてこい」とロイを促して一人でさっさと歩き出した。
どんどんと先に歩いていってしまう小さな背中は、気を抜くとすぐに、人ごみの中に紛れ込んで見えなくなってしまいそうだ。ロイは少年の背中を見失わないように、と、強引に通行人をかき分けながら、エドワードの後を追った。
「………………」
なんとか人ごみから抜けだしたロイは、不機嫌そうに華奢な肩を精一杯怒らせて歩く少年の後ろをついていきながら――困惑していた。
(ずいぶんと機嫌が悪いな……)
そっとエドワードの様子をうかがって、ロイは気付かれないようにため息をこぼした。
(この間の返事を聞きたかったのだが……どうやら今日も無理なようだ)
黙りこくったままでエドワードが向かった先は、一週間ほど前にロイがエドワードを連れて行ったあの路地だった。
「………………」
黙ったまま、さっさと一人で路地に入る少年の後を追って、ロイもそのせまい路地へと入る。
入り口の辺りで立ち止まったロイよりも五歩ほど奥に入り込んだ場所で足を止めると、エドワードはくるりとこちらをふり返った。そのままじっと不機嫌そうにロイを睨みつけてくる。
「………………」
ロイはじっとエドワードの次の出方を待った。
「………………」
「………………」
辺りに沈黙が落ちる。
しばらくして、エドワードがぽつりとつぶやいた。
「……オレ。あれから色々考えたんだけどさ……」
「…………」
突然のエドワードのセリフに、ロイはわずかに身構えた。黙ってその先の言葉を待つ。
エドワードはロイの顔から視線をそらせると、うつむきながら、
「……オレもアンタの――ロイのこと好き……だと思う……たぶん」
どこか自信なさげな少年の告白。だがロイにはそれで十分だった。
「っ!」
わずかに目を見開いてから――ロイは嬉しそうに微笑んで、エドワードを抱きしめようと両手を大きく広げた。そのまま前に一歩踏み出す。
「エド!」
「ちょっと待て!」
ロイが二歩目を踏み出す直前、エドワードが待ったをかけてきた。
「?」
訝しげにエドワードの顔を見つめるこちらをじっと見つめ返して、エドワードはきっぱりと言い切った。
「前に、アンタも言ってたけど――今言ったコトと『仕事』とは別問題だからな! オレは『怪盗』をやめる気はないぞ!」
「ああ、わかっている」
「それと!」
びしっとロイを指差して、エドワードは再び断言した。
「オレはアンタに捕まる気もない!!」
「それも、わかっている」
言いながらロイは、エドワードがそれ以上なにか言う前に、自分と少年とのあいだの四歩ぶんの距離をさっとつめた。
そして、間近で自分を見上げてくる金色の瞳に優しく微笑みかけて――その小柄な身体を両腕の中にそっと抱きこんだ。
「!?」
エドワードは最初、わずかに暴れかけたが――それ以上の抵抗はしなかった。
照れて黙り込んだまま、大人しく自分の腕に抱きしめられているエドワードの蜂蜜色の髪に顔をうずめながら、ロイが小さくささやく。
「好きだよエド」
「っ!」
一瞬。びくっとしてから――おずおずと頷いたエドワードに、ロイは満足げに微笑むと、やっと手に入れたそのぬくもりを抱きしめる腕に、力を込めた。
end