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―――そして、予告日の夜。
二代目『怪盗F・A』から予告状が届いたその二階建ての美術館は、侵入者を警戒してすべての部屋の明かりが点されていた。
美術館のいたるところに、大勢の警備のための人員が配置されていく。
「大佐、警備兵の配置、すべて終了しました」
「大佐、庭のほうも準備完了しました」
「ごくろう」
美術館の二階の一室で、ロイは部下達からの報告を受けていた。その隣にはホークアイの姿も見える。
「大佐。そろそろ予告時間ですので大佐も移動してください」
資料片手に時計を見ていたホークアイが時間を告げる。
「ああ、わかった」
部下達に指示を出してから、ロイはホークアイを伴って部屋から出て行った。
そのロイたちの様子を、やや離れたところから窓越しに眺める小さな二つの影があった。
二代目『怪盗F・A』ことエルリック兄弟である。
顔の上半分を覆う仮面と、黒一色の服装のおかげで、二人は完全に闇にまぎれていた。そのため、明かりのついた建物内からはその小さな姿は見えにくい。
二人は、予告している宝石がある美術館の正面に建っている建物の庭先の大きな木の上にいた。
美術館の二階の部屋の窓とちょうど同じ高さに位置しているその木の上で、着々と警備の準備が進む様子を眺めていた。
「なあアル。なんかこの間より警備の数が多くないか?」
「………………」
話しかけたのにいつまでたっても返事か返ってこないことを不審に思い、エドワードがアルフォンスのほうを振り返ると、アルフォンスはじっと美術館の二階の部屋を見つめていた。
エドワードの声はまったく聞こえていないようだ。
(何だ?)
アルフォンスの視線の先を追ってエドワードが室内を見ると、ちょうどロイとホークアイが部屋から出て行くところだった。
(……ああ、なるほど)
一点をじっと見つめたまま固まってしまっている弟。
そのだいたいの理由を察して、エドワードは納得した。
しかし、いつまでもここでじっとしているわけにもいかない。エドワードはしかたなく、遠慮がちにアルフォンスの肩を指でつついた。
「おーい、アル」
「はっ!」
肩をつつかれて我に返った。
「なあ、アル。ひょっとしてお前が一目惚れした軍の女の人ってさ……さっきの金髪の女の人か?」
そのエドワードの問いにアルフォンスは、かあぁっと耳まで真っ赤になって、こくりと小さく頷いた。
「アルの気持ちはわからなくもないけどさ……今はダメだ」
「……大丈夫、わかってるよ兄さん。ボクらは二代目の『怪盗F・A』だもんね。そう何度も失敗したりしたら師匠(せんせい)になんて言われるやら」
「アル……」
エドワードが何かいいかけた時……街の中央にある時計塔の針が10時を指し示した。
予告時間だ。
エドワードとアルフォンスは顔を見合わせてひとつ頷くと、木の上からひらりと身軽に飛び降りた。
→ It continues.