第六話
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「た、大変です大佐!」
 大慌てでノックもなしに部屋に駆け込んできたハボック少尉の様子に、この部屋の主ロイ・マスタングは書類をめくる手を少しだけ止めた。持ってきたコーヒーをロイの机に置こうとしていたホークアイ中尉もなにごとかと入り口の方を振り返る。
「どうした?」
 ロイが書類から視線を外さずに尋ねると、ハボックは手に握り締めていた紙切れを示して言った。
「二代目『怪盗F・A』から予告状が来ました!」
「なにっ!?」
 そのハボックの言葉に、ロイはものすごい勢いで書類から顔を上げた。
 手に持っていた書類の束を、叩きつけるようにして机の上に戻すと、ハボックが差し出した予告状を、なかばひったくるようにして奪い、素早くその予告状の内容に目をとおす。

 その予告状には前回と同じ筆跡で、

     『明日の晩。
      10時頃
      街の美術館にある真紅の焔(しんくのほのお)をいただきに参ります。

      二代目『怪盗F・A』―――』

 と書かれていた。

「この『真紅の焔』とは?」
 ロイの質問に、ハボックは予告状と一緒に持ってきていた参考資料をロイの机の上に置く。資料の一ヶ所を指で指し示しながら、
「赤ん坊の拳ほどの大きさの、大きなルビーらしいですね。光に透かすとルビーの中央に炎のような揺らめきが見えることからこの名前がついたそうです」
「……なるほど」
 ハボックの説明を聞きながらその手元を覗き込んでいたロイは、一通りの説明を聞き終わると静かに椅子から立ち上がった。そのままてきぱきとハボックに指示をだす。
「今晩から交代で美術館の警備に当たれ。銃は使うな、生け捕りにしろ。私もすぐに美術館のほうへ向かう」
「はい!」
 その話の流れに、それまで黙っていたホークアイが慌てて口を挟んだ。
「大佐! 書類の方は……」
「すべて止めて後まわしだ。二代目『怪盗F・A』の予告状を最優先にする!」
「は、はい!」
 ロイとホークアイとのやり取りを横で見ていたハボックは、ここ最近。大佐の様子が普段と違うので何かあるぞと、他の同僚が話していたこと思い出した。
(最近、なぜか仕事をためなかったのは、いつ二代目『怪盗F・A』からの予告状が来てもいいように……だったりして……?)
 ちらりとロイの表情を盗み見ながらふと、そんな事を考えてしまった。
(まさか、な……)
 そう思いながらも、いまひとつ不安感を拭いきれないハボックであった。


→ It continues.