第四話
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 ガタガタと地下室からなにやら騒がしい物音。
 それに続いて、なにかを派手に壊した音が一階のリビングまで聞こえた。
 その音を耳にしたイズミ・カーティスは、眉間に思いっきりしわを寄せると、飲みかけのお茶が入ったティーカップをテーブルの上に戻して、ソファから立ち上がった。
 やや大股でリビングをつっきり地下室へと向かう。地下室には自分の弟子であるエドワード・エルリックとアルフォンス・エルリックの二人がいるはずだ。掃除と資料の整理を言いつけておいたのだが、一体なにをやらかしたのやら……
 バン!
「お前たち! なにをやっている!」
 地下室の入り口のドアを開けると同時に怒鳴りつける。そのまま弟子達に説教をしようとしたイズミの口がぽかんと開いた。
 地下室の中にいたのは、なぜかずぶ濡れの小さな男の子が二人。
 金色の瞳に蜂蜜色の髪をした幼い子供と、同じく金色の瞳にこちらはややくすんだ金色の短い髪の幼い子供。その二人がずぶ濡れのまま床にへたり込んでいる。
 辺りには空になったバケツが転がっており、床は当然水浸し。棚の物がいくつか床に散乱していて、隅のほうにモップが二本転がっているのが見えた。
 しかし、エドワードたちの姿は見えない。
 もっとよく確認しようとイズミが地下室の中に足を踏み入れたとき、それまで呆然としていた幼い子供達が同時にイズミに向かって口を開いた。
「せんせい、たいへんです!」
「せんせい、どうしよう!」
「……?」
 自分のことを師匠(せんせい)と呼ぶ幼い男の子。しかも、昔どこかで見たことのある容姿だったりするワケで……
 そこから導き出された答えは―――
「お前たち、エドワードとアルフォンスか!?」
 目を大きく見開くイズミに、エドワードとアルフォンスらしき子供はこくこくと何度も首を縦に振った。
「……なんでそんな姿に」
 両手で頭を抱えながらうめくイズミ。
 すると、エドワードとアルフォンスは同時に勢いよくしゃべりだした。
「バケツがひっくりかえってさ!」
「たなからおちてきて!」
「てがすべったんだ!」
「こわれちゃったんです!」
 そこまで一気にしゃべる。しかし、あまりに支離滅裂な二人の説明にイズミはついていけない。
「落ち着け二人とも。なにがどうしたって?」
 話の内容がちゃんとイズミに伝わっていないと知ると、子供達はわーんと泣きだしながらまた同時にしゃべる。
「アルがとつぜんきえたんだよ!」
「にいさんがいなくなっちゃって!」
「きがついたらちっさくなってて!」
「ぜんぜん、もどらないんだ!」
「どうしよう!」
 混乱してパニックを起こし、わんわんと泣き出す二人。
 泣きだした彼らをなだめながら、イズミは必死に頭の中でなんとか聞き取れた単語を整理する。
 つまり――棚から落ちてきた何かが壊れて、その後にエドワードとアルフォンスが子供化した、と。いうことらしい。
 なんとなく状況が飲み込めた。
 改めて辺りを見回せば、棚に収めていた物がいくつも床に散乱している。
 何個かは、壊れて使い物にならなくなっていた。その中に香水瓶に似た赤いガラス瓶の破片を発見してイズミは思わず声を荒げた。
「ああっ! これを壊したのか!」
 そのイズミの剣幕にエドワードたちはびくりと身体を竦ませると、反射的にあやまった。
「「ごめんなさい!!」」
 そんな弟子たちなど気にせず、イズミは棚から落ちた物のそばにしゃがみこんだ。
「あっ、これも!」
 今度は青い色の香水瓶に似たガラスの破片を拾い上げた。
「あーあ、苦労して手に入れたのに……」
 心底残念そうに青いガラス瓶の破片を指でつつく。
「「ごめんなさい!!」」
 師匠の言葉に、さきほどと同じ謝罪を繰り返すエルリック兄弟。身体は小さくなっているものの、どうやら中身は元の年齢のままらしい。
「まあいい。それよりお前らが子供化した原因だが、どうやら二種類の薬が変なふうに作用したんだね」
「「くすり?」」
 イズミの言葉に二人はきょとんと小首をかしげる。
「この瓶の中に入っていた液体は特殊な薬だ。こっちの赤い瓶のやつも。両方とも効果は違うが、同じルートで手に入れた特殊なやつだ」
「?」
「それで?」
 いまいち理解していない子供達に、イズミはイライラと髪をかきむしると、
「あーもう! 細かい話はいいとして、つまり薬の一時的な効果によって子供化しただけであって、薬が切れたら元に戻る。……と、思う」
 最後のほうは自信なさげだ。
「くすりがきれたらって?」
「いつになればもとにもどれるんですか?」
 不安そうにたずねてくるエルリックとアルフォンスの頭を撫でながらイズミは少し考えてから気楽に言った。
「ま、そんな強い薬じゃないし一日ぐらいで効果は消えるだろうさ」


→ It continues.