私物盗難事件
-2-

 ――食堂にて。
 いくつも並ぶテーブルの一つ。
 そのうちの一つに腰をおろして、エドワードとアルフォンスは頭を寄せ合って考え込んでいた。
 テーブルの上には数枚の紙。
 そのすべてに、二人で手分けして聞きだした被害者から被害報告が記されている。
 その被害報告の内容をアルフォンスが順番に読み上げていく。
「えーっと……今までに盗られたものは……奥さんの愛妻弁当。食べかけのお菓子。まだ読んでなかった新聞。スリッパ、しかも片方だけ……」
「……って本当にたいした物ねーな、コレ」
「盗られた物もバラバラだし……一体犯人の目的はなんなんだろうね?」
『う〜ん…………』
 二人で腕を組んで悩んでいると、そこに、
「よお、エドにアル。どうした? 二人して難しい顔して……なんかあったのか?」
 背後からかけられた声に振り返れば、そこに立っていたのは短い金髪にくわえタバコの青年が一人。
「あ、ハボックさん」
 そのハボックの顔を見た途端。
 ガタン!
 エドワードは勢いよく椅子を蹴って立ち上がると、ふりむきざまにビシッ! とハボックの鼻先に指を突きつけて、
「犯人はお前だっ!!」
 そう叫んだ。
「ば、はれたかっ! …………って、なにやらすんだよ」
 一瞬、愕然とした表情をした――あと、すぐに真顔に戻ってからハボックはエドワードにツッコんだ。
「あれっ!? ちがうの?」
「……兄さん。何でいきなりハボックさんが犯人なワケ?」
 あきれる弟に、エドワードは決まり悪げに視線をそらせると、さっきまでハボックに突きつけていた人差し指を引き戻して、その指でぽりぽりと頬をかいた。
「いや、その……愉快犯かなっ〜と思ったりしてさ」
「まあ……ハボックさんなら、そういうイタズラしそうな気もするけど……」
「だろ?」
 こそこそと小声で――しかも、けっこう遠慮のないことを言うエルリック兄弟をジト目で見つつ、
「お前ら…………一体オレをどーゆー目で見てるんだ……」
 ハボックはなさけなさそうにため息をもらした。
「いや、その……東方司令部の中で起こっている盗難事件について調べてたから、つい……」
 必死に弁解するアルフォンスの言葉に、ハボックは『ああ、アレか』と頷いた。
「何か知ってんの?」
「知ってるも何も、オレも被害者だからな」
「被害者って、なんか盗られたのか?」
「ああ、タバコを一箱な」
「……タバコ一箱、っと」
 聞いたことをすかさずメモに追加するアルフォンス。
「で、どのぐらい前の話し?」
「ん? どのぐらいって……たった今だぞ。ついさっき」
「なにっ!?」
「ええっ!?」
 ハボックの言葉に、エドワードとアルフォンスは思わずハボックに詰め寄った。
「それじゃあ、犯人はまだこの建物の中にいるってことですか!?」
「たぶんそうだな。行くぞアル!」
「うん!」
「えっ!? あ、おい!」
 いきなりダッシュで食堂から出て行ったエドワードとアルフォンスを、ハボックはただ呆然と見送った。


→ It continues.