〜2〜
そんなやり取りをしながら森の中を歩いていたエドワードとアルフォンスは、一本の木にたどり着いた。
その木の幹にはなぜか一枚の板が釘で打ち付けられており、その板にはこう書かれてあった。
『この木より右折。白バラの木まで』
「『白バラの木』ってなに?」
「さあ? とりあえず他にあてもないから書いてある通りに行ってみるか」
「そうだね」
エドワードの言葉にアルフォンスはひとつうなづくと、二人は板にかれてあった方向に向かって歩き出した。
◆◆◆
しばらく行くと二人はエドワードの身長と同じぐらいの大きさのバラの木にたどり着いた。
白いバラが咲いているその木の根元には先ほどと同じような板が立てかけられており、その板にはこう書かれてあった。
『北にまっすぐ。目的地まで』
「北ってどっちだ?」
「さあ?」
普通の森であれば時間の経過とともに太陽が西に動くので、現在時刻と太陽の位置、そして自分の影の位置などで大まかな方角を知ることができる。
しかし、この森はどうやら普通ではないらしくさっはからずいぶんと長い時間歩き続けているにもかかわらず太陽はまったく動かない。最初と変わらずにずっと真上からエドワードたちを照らし続けている太陽――これでは到底方角を知ることなどできないわけで……
「とりあえず、この板がむいてる方に行ってみる? 間違ってたらここまで引き返してくればいいだけだし」
「そうだな」
アルフォンスの提案にエドワードも賛成した。
そしてあてずっぽうで方向を決めると歩き出した。どのみち行き先も、行く宛ても、あってないようなものなのだ。
◆◆◆
あてずっぽうで森の中を歩き出したエルリック兄弟。
二人がその『目的地まで』という『モノ』を探しながら歩いていると、大人が三人手をつないでようやく一回りできるほどの巨木に出くわした。
その木の幹のかなり高い位置に一枚の板が釘で打ち付けられており、その板にはこう書かれてあった。
『目的地、このむこうすぐ ↓ 』
「むこうったって……」
「すぐって言われてもねぇ……」
エドワードとアルフォンスは困ったようにその板を見上げた。
『むこう』と書かれてはいるものの、それを示している矢印は今さっき自分たちが歩いてきた方向――もしくは真下の地面をさしているのだ。
困りはてたエドワードが板と木の幹の辺りを眺めていると、木の幹になにやら出っ張りのようなものがあるのが目に入った。
「何だこれ? ドアノブ?」
よく見るとそれは『作成時に失敗した不細工な出来の木製のドアノブ』に見えなくもないようなシロモノだった。
「なんで木の幹にドアノブが……」
不思議そうに首をひねるエドワード。その横で、アルフォンスが兄の見つけたドアノブを中心に木の幹を調べていた。
「これは……」
木の幹を丹念に調べていたアルフォンスは、ドアノブを中心にドアの形にわずかに切れ込みが入っているのに気がついた。大人一人がやっと通れるほどの大きさのドアらしき切れ込みを見つけて慌てて兄を呼ぶ。
「兄さん! これドアっぽいよ」
「えっ!?」
アルフォンスに呼ばれ、エドワードも飛びつくようにしてその木のドアを調べ始めた。
「ほんとだ……これ、開きそうだ」
ドアノブに慎重に手をかけたエドワードがそうつぶやいた。そっとドアノブを回してみると思いのほかスムーズに回った、そしてそのままドアを押し開けて――
「カタい〜!」
ドアはわずかに開いたものの、それ以上はまったく動かない。力いっぱいドアを押すがエドワードの力ではもうびくともしなかった。
「ボクがやってみるよ」
エドワードのかわりにアルフォンスがドアノブに手をかけた。そのまま力いっぱいドアを押す。
ギギギィィ〜……
重そうな音を立ててゆっくりとドアが開く。その開いたドアのむこうには広く美しい庭園が広がっていた。奥には小さく城も見える。
「城……これがあの人の言ってた城かな?」
突然、目の前に広がった美しい光景にエドワードとアルフォンスはただぽかんとその景色を見ていた。
→ It continues.