〜第三話〜
コンコン。
「どうぞ」
ロイが書き物の手を止めて返事をしてやると、エドワードが書斎の扉を開けてひょっこりと顔を覗かせた。
「なあ、脚立とかってない?」
「ああ、それならここにあるよ。入っておいで」
部屋の隅に置いてある脚立を指差してから、手招きをしてエドワードを呼ぶ。
「そういえばオレ。ロイの書斎に入るのってはじめてだ」
部屋の中をきょろきょろとものめずらしそうに見ているエドワードの仕草に、ロイはふっと目を細める。
「そうだったかな?」
「あ、写真だ」
エドワードが、チェストの上に飾られた写真に目をとめた。
写真に写っている、大人の男性と女性に挟まれるようにして立っている子供を指差して、
「うわ〜若い。この真ん中に写ってるのってロイ?」
「ああ、そうだ。たしか15才ぐらいの時のものかな?」
「へぇ〜。じゃあ、この一緒に写ってるのがロイのお父さんとお母さん?」
「ああ」
「ふーん。一緒に住んでないんだな。今どこに住んでんの?」
気軽に尋ねたエドワードだったが、ロイの答えは予想外のもので――
「戦争に巻き込まれてね……もう、5年も前になるかな」
その答えにエドワードは、ぎくりと肩を強張らせた。
「ご、ごめん! オレ、悪いこと聞いちゃった……」
うろたえるエドワード。しかしロイは静かに笑うと、
「いいよ、気にすることはない。もう昔のことだ」
「…………」
――そう言ったロイは、どこか寂しげで……なんだか、聞いてはいけないことを聞いてしまった気がした。
脚立を借り、書庫に戻ったエドワードだったが――本に集中できなかった。
目的の本を書棚から引っ張り出して読みはじめるものの、まったく内容が頭に入ってこない。
「あ〜ダメだ!!」
わめきながら蜂蜜色の髪を両手でぐしゃぐしゃにかき回わす。読んでいた本を適当に床に放り出すと、エドワードは膝を抱えてその上に顎をのせて、ぽつりと呟いた。
「ロイ、笑ってたけどどこか寂しそうだった……オレが帰っちゃったら独りぼっちになっちゃうのかな……この広い家で、一人っきりで……」
ばさり、と出した翼を――もう右側しか残っていない翼を、伸ばした左手でそっと撫でる。
「………………」
そんなこと考えたこともなかった。
自分には弟がいたし、何をするにもいつも二人一緒だった。ここに落ちてきた時も、ロイがいてくれたから一人にはならなかった。
だけどロイは……
ロイに色々してもらったけれど、自分は何一つ返せていない気がする――自分はロイに何がしてあげられるだろう?
→ It continues.