〜2〜
外見年齢10歳ほどにまで子供化してしまったロイをつれて、エドワードは更衣室に行くことにした。
子供サイズの今のロイに、大人サイズの軍服ではさすがに動きづらい。ロッカーに入っている私服か何かにでも着替えさせてしまおう。でないと……
「おっと」
考えているエドワードのその横で、ロイが長く余った自分のズボンの裾を踏んづけて転びそうになっていた。
「大佐、気をつけて歩かないと転ぶぞ」
「…………子ども扱いしないでくれ、鋼の」
むくれて言い返してくるロイに、エドワードははいはいといった感じで答えながら、執務室に残ったアルフォンスを振り返った。
「じゃあアル。誰か来たら頼んだぞ」
「うん」
「じゃいくか。大佐、歩きにくいんだろ? ゆっくりでいいからさ」
「…………だから、子ども扱いしないでくれないか?」
そんな二人を見送って、執務室に一人取り残されたアルフォンスは、所在なさげに部屋の真ん中で立ち尽くしていた。
すると――
コンコン。
ノックとともに短い金髪の青年、ジャン・ハボック少尉が顔を出した。
「大佐、この間の件なんですが……って、いないのか」
部屋の中を見回して部屋の主の不在を知ると、ハボックはいまだに所在なさげに立ち尽くしているアルフォンスにたずねた。
「大佐は?」
「その……今ちょっと席を外してて……」
「ふーん?」
空々しいアルフォンスの態度を訝しく思いながらも、ハボックはとくにそれを追求することはなく適当に相づちをうった。そしてそのまま部屋から出て行こうとして――
「ん? なんだこれ?」
いまだにテーブルに置かれたままの瓶入のチョコレートに目をとめると、テーブルのそばまで近寄ってきた。
瓶をちらりと見て、ポツリと一言。
「チョコか……一個ぐらいもらってもいいよな?」
「あっ、それは……」
コルク栓をあけてチョコレートを一つつまむと、アルフォンスが止めるまもなくひょいっと口の中に放り込んでしまう。
「? 『それは……』なんだ?」
もぐもぐとやりながら、何か言いかけたアルフォンスのほうを振り返る。
アルフォンスは気まずげにハボックから視線をそらせると、わざとらしく明後日のほうを見ながらつぶやいた。
「……もういいです。遅かったみたいだから」
「?」
しばらくすると――
「うわっ!? なんだコレ!?」
突然上がったハボックの悲鳴にも似た声に、
「…………」
アルフォンスは無駄とは知りつつも、耳を押さえて聞こえていないフリを決め込んだ。
「……私が少し席を外している間に、一体何があったんだハボック少尉?」
執務室に戻ってきたロイの第一声はそれだった。
ロイ同様、外見年齢10歳ほどの子供と化してしまったハボックは、ガーンとショックを受けた様子で、うなだれて膝を抱えて床に座り込んでいた――ハボックの周りにどんよりとした空気が漂っているのが見える気がする……
「いや、その……色々とありまして……」
笑ってごまかそうとしている弟をジト目で眺めつつ、
「アル……お前止めなかったのか?」
「はははっ…………ごめん。止めるのが遅かったんだ……」
「はははっ………………」
ぼそっともらしたアルフォンスの言葉に、エドワードはうつろに笑って、いまだに床に座り込んだままの第二の被害者を見下ろした。
「大佐〜これって元に戻れるんすか!?」
すがるような顔で情けない声を上げる部下に、
「知らん」
ロイはそっけなくそう言い捨てた。
「………………」
さらに落ち込み始めたハボックの背中をぽんぽんと叩いて、アルフォンスが必死にフォローを入れる。
「ま、まあそう落ち込まずに、ね? とりあえず、しばらく様子を見てみましょうハボックさん」
「…………そうだな。とりあえず落ち着いて平常心だ、平常心……」
そうつぶやきながら床から立ち上がると、ハボックはぶかぶかになってしまった軍服のポケットに手を入れて苦労しながらなにやらごそごそ探し始めた。
「?」
「なにしてんの?」
不思議そうにたずねてくるエドワードの問いには答えず、ハボックは苦労して取り出したタバコの箱からタバコを一本取り出してくわえた。
「あっ! ダメですよ子供なんだらかタバコなんて吸っちゃ」
ライタを取り出して火をつける前にくわえていたタバコをアルフォンスに取り上げられて、ハボックは情けない声を上げた。
「そんな〜〜」
→ It continues.