気まぐれな子猫

「…なあ、大佐」
「どうした?」
 不意に、それまで執務室のソファーで大人しく文献を読んでいたエドワードに名前を呼ばれ、ロイは書き物をしていた机から顔を上げた。
 ちゅっ。
 振り向いた途端にエドワードからキス。
「ええっ?!」
 ガタタッ! どすん!
 突然のエドワードの行動にロイは驚きハデに椅子から転がり落ちた。
「…っぅ〜」
「大佐、大丈夫か?」
 ロイのあまりのリアクションの大きさに、キスを仕掛けたエドワード自身もびっくりして思わずロイの顔を覗きこむ。
 机に手をついて何とか身体を起こすロイ。
「突然何なんだ。鋼の」
「ただキスしたくなっただけなんだけど……こんなに大佐が驚くとは思わなかった」
 と、エドワード。
「プライベートな時ならいざ知らず。こんな所で、しかも君からキスされるとは夢にも思わなかったよ…」
 右手で顔を覆って大きく息を吐く。まだ心臓がバクバクしている。
 ロイの方から、所かまわずにキスをすることはよくあるが、エドワードからキスされるなんて、数える程度だ。
「…だってキスってさ、したいときにしないと意味ないじゃん?」
 そういって無邪気に笑う。
 そんなエドワードを見て、ようやく椅子に座りなおしたロイがにやりと笑う。
「それもそうだ…私もキスされたい気分になってきたし、もう一度君からキスしてくれると嬉しいのだがね」
 そのロイの言葉にエドワードはちょっと小首を傾げてから、
「…いいよ。大佐ちょっと目、閉じてて」
「ああ」
 エドワードの要求に素直に応じ目を閉じる。
 椅子に座ったままの体勢で目を閉じたロイの顔に、エドワードが静かに顔を近づけて……
 ぺろり。
 鼻の頭を舐められた。
「は、鋼の?!」
 鼻を片手で押さえて赤くなるロイ。
「もうキスしたい気分じゃなくなったから、これでおしまい」
 そういってエドワードは、へへっと笑った。


end