「大佐、手だして」
「?」
執務室に入ってくるなり、あいさつもそっちのけで唐突にそんなことを言い出したエドワードにロイは疑問符を浮かべた。
「いいからいいから」
そういわれロイは仕方なく空いている方の手を、手のひらを上にして机の上に出す。
エドワードはそれを確認すると、コートのポケットを逆さまにしてその中身を全部ロイの手のひらにぶちまけた。
ばらばらばら。
それはロイの手のひらを埋め尽くし、みるみる机に小山を作っていく。
「キャンディ?」
手のひらに山と盛られた、黄色やオレンジのカラフルなセロファンに包まれた丸いものをロイはしげしげと眺めた――そして、次にエドワードの顔を見る。
「鋼の……いったいこれは何だ?」
「見りゃぁわかるだろ? キャンディだよ」
「そうではなくて、なぜこんなところに大量のキャンディを出したのか、ということだ」
逆の手で自分の手のひらと、机の上の小山を指し示す。
「おすそわけ」
にぱっと笑ってエドワード。
その笑顔に思わずながされそうになるのをこらえて、ロイは聞いた。
「理由は?」
「それがさ、こないだ行った町で仲良くなった子供がオレとアルにやるって言ってたくさんくれたんだよ」
食べ切れなくてさ、と笑う。口をもごもごさせているところを見ると、今もキャンディをひとつ頬張っているらしい。
ロイは苦笑すると手のひらのキャンディに目をやった。
「なるほど、それで『おすそわけ』か……」
「そ。いろんな種類があるんだぜ、それ」
嬉しそうに言うエドワードにロイは聞いてみた。
「いちご味はあるのかい?」
「ざんねん。オレが今食べてるのが最後の一個」
「……そうか」
そう言うと、ロイは持っていたキャンディをすべて机の上に置いてからおもむろに椅子から立ち上がった。机ごしに腕を伸ばして立っているエドワードの肩をぐいっと引き寄せる。
「えっ!?」
不意に前に引っ張られてバランスを崩し、おもわず机に片手をつく。そのエドワードのあごに手をかけてくっと上を向かせると……
「!!」
ロイの顔が近づいてきたと思うまもなく唇を塞がれた。
エドワードの唇を割ってするりとロイの舌が滑りこんでくる――次にロイが身体を離したときには、エドワードの口の中にあったキャンディがなくなっていた。
「なっ、なっ、な……」
突然のロイの行動にエドワードは顔を真っ赤にして口をぱくぱくさせた。
「いちご味のキャンディ。たしかにもらったよ」
そういってにやりと笑う。そのいたずらが成功した子供のようなロイの顔を見て、さらに恥ずかしくなった。
「ばか大佐……」
からっぽになったエドワードの口の中には、まださっきのキャンディのいちご味が残っていた。
end