「え? 大佐いないの?」
「ええ、ちょっと席を外しているのよ」
ちょっとした用事のために東方司令部に電話をかけたエドワードだったが相手はあいにくと不在。電話の応対に出てくれたホークアイ中尉に『わざわざかけてきてくれたのに、ごめんなさいね』と言われてしまうとそれ以上は聞けなくなった。
「もしよければ、わたしが用件だけでも聞いとくけれど?」
そう申し出てくれたホークアイ中尉に礼をいい、エドワードは用件だけを手短に伝える。
「わかったわ、これでいいのね」
「それじゃ……」
エドワードが電話を切ろうとしたとき、なにやら廊下を全力で走りぬける音と、乱暴にドアが開き、そしてしまる音が電話の向こうから聞こえた。そしてホークアイ中尉の『あっ』という小さな声。
エドワードがなにごとかと思っていると、突然電話から懐かしい声が聞こえた。
「鋼のか? 私だ」
ロイの声だ……
一ヶ月ぶりに聞くその声にエドワードは不意に泣きたくなった。
優しい、自分がよく知っているロイの声。
「元気にしているかね、今どこに?」
ロイととりとめのない話をしながらエドワードは受話器を握り締め必死に涙をこらえた。
悲しいのではない。そうではなくて…
「大佐…」
喉元までせり上がってきた『あいたい』という言葉をエドワードは必死に飲み込んだ。ただでさえ忙しいロイを、そんな子供のようなわがままで困らせたくはなかった。
「鋼の?」
不意に途切れたエドワードの声にロイが聞き返す。
「ごめん。なんでもない」
勤めて明るくエドワード。するとロイが唐突に、
「こうしていると、君の声はすぐ耳元で聞こえているのに…伸ばしたこの手が君の頬に触れられないというのは、もどかしいものだね」
一瞬どきりとした。泣きそうだったのを気付かれたのかもしれない。
「あいたいよエドワード。君はそう思ってはくれないのかい?」
突然のロイの言葉に驚き、そして間をおくことなくエドワードもはっきり告げる。
「俺も! 俺もロイにあいたい!」
電話越しにロイの笑い声が聞こえた。
「では、早く私の元へ帰っておいでエドワード。待っているよ」
end